2020年5月12日火曜日

お釈迦様のご生涯③(四門出遊)

ある時、シッダールタ王子は東の門から家来を連れて

街を見物に出かけました。

東の門から出ると、お年寄りを見かけます。

耳は遠く、腰は曲がりまっすぐに歩くこともできません。

シッダールタ王子は家来に尋ねます。

「私もいずれあのようになるのだろうか?」

家来は答えます。

「生きていれば必ずあのように老人になることでしょう。」

シッダールタ王子は「そうか」と肩を落としてお城へ帰ります。


気を取り直して別の日にまた家来を連れて南の門から出ると、

病で苦しむ人に遭遇します。

シッダールタ王子は家来に尋ねます。

「私は今健康であるが、あのように苦しむことがあり得るのだろうか?」

家来は答えます。

「はい。長く生きていれば、いつか必ず病になるでしょう。」

「そうか」と肩を落としてシッダールタ王子は城へと帰って行きます。

また別の日に家来を従えて西の門から出ますと、

今度は葬式の行列に遭遇します。

シッダールタ王子は家来に尋ねます。

「あれは何であるか?」

家来は答えます。

「あれは葬式です。一人の人が死を迎えたのです。」

「人は必ず死を迎えるのであるか?」

「はい。生きている者は必ずいつか死を迎えます。」


「そうか」と肩を落としてシッダールタ王子は

城へと帰って行きます。

最後に北の門から出かけた時に、

清い出家者と出会ったといいます。

シッダールタ王子はその清い出家者に密かに憧れを抱きます。

このお話が有名は四門出遊(しもんしゅつゆう)です。

お釈迦さまの出家の動機として伝えられてきました。

私たちの誰も逃れることができない苦、

特に「老・病・死」という三つの苦しみに

ついて、シッダールタ王子の

お話しを通して考えさせられます。

『スッタニパータ』
荒牧典俊・本庄良文・榎本文雄訳