5月前半のことば
「わたしだけが悲しいのではない」
新美南吉氏が書かれた絵本『でんでん虫のかなしみ』にこのような文章があります。
一匹のでんでん虫がありました。ある日、そのでんでん虫は、大変なことに気がつきました。「わたしは今までうっかりしていたけれど、わたしの背中の殻の中には悲しみがいっぱい詰まっているではないか」この悲しみはどうしたらよいのでしょう。でんでん虫は、お友達のでんでん虫の所にやって行きました。「わたしはもう、生きてはいられません」と、そのでんでん虫はお友達に言いました。「何ですか」とお友達のでんでん虫は聞きました。「わたしは何と言う不幸せなものでしょう。わたしの背中の殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっているのです」と、はじめのでんでん虫が話しました。すると、お友達のでんでん虫は言いました。「あなたばかりではありません。わたしの背中にも悲しみはいっぱいです」
私たちは皆、それぞれの苦しみや悲しみを抱えています。
仏教の教えによれば、苦しみは生きとし生けるものの共通の経験です。
苦しみとは「思い通りにならない」ということです。
思い通りにならないことを、思い通りにしようとして、苦しんでいるのは,決して私だけではないのです。