(本文)
かくの如きを我聞きき。
(現代語訳)
このようなことを、私阿難(あなん)は聞きました。
(解説)
釈尊の時代のインドでは、
教えを文字にすることなく、
口から口へと伝えていました。
ですから釈尊の著書はありません。
釈尊が涅槃(ねはん)に入られた後、
お弟子が集まって、教えをまとめました。
お弟子の中で、釈尊の側で身の回りのお世話を
長年されてきた、阿難尊者(あなんそんじゃ)は
「教えを最も多く聞いてきた人」として
「多聞第一(たもんだいいち)」と認められていました。
そこで阿難尊者が「私はこう聞きました」と
教えを言葉にし、皆がそれを認めたならば、
その言葉を復唱して、釈尊の教えを確認しました。
ですからお経の冒頭には
阿難尊者が「私はこのように聞きました」
という意味の「如是我聞(にょぜがもん)」という言葉や
「釈尊は阿難にこうおっしゃいました」
「仏告阿難(ぶつごうあなん)」という言葉が多いのです。