2021年5月26日水曜日

仏説阿弥陀経⑮

(本文)


また次に舎利弗(しゃりほつ)、


かの国には常に種々奇妙(しゅじゅきみょう)なる


雑色(ざっしき)の鳥あり。


白鵠(びゃっこく)・孔雀(くじゃく)・


鸚鵡(おうむ)・舎利(しゃり)・


迦陵頻伽(かりょうびんが)・


共命(ぐみょう)の鳥なり。


この諸衆(もろもろ)の鳥、


昼夜六時(ちゅうやろくじ)に


和雅(わげ)の音を出(い)だす。


その音(こえ)、五根(ごこん)・


五力(ごりき)・七菩提分(しちぼだいぶん)・


八聖道分(はっしょうどうぶん)、


かくの如き等(ら)の法を


演暢(えんちょう)す。


その土(ど)の衆生、


この音(こえ)を聞きおわって、


皆悉く仏を念じ法を念じ僧を念ず。






(現代語訳)


〈釈尊から舎利弗(しゃりほつ)に向けてのお言葉のつづき〉


「また次に舎利弗(しゃりほつ)よ、


極楽には常に種々の美しく彩られた鳥がいる。


それは白鳥、クジャク、オウム、九官鳥、


迦陵頻伽(かりょうびんが)、


共命(ぐみょう)の鳥である。


これらの鳥は、昼夜六時間毎に、


優雅な鳴き声でさえずるのだ。


その鳴き声は、五根(ごこん)・五力(ごりき)・


七菩提分(しちぼだいぶん)・


八聖道分(はっしょうどうぶん)などの、


仏教の教えを説いている。


極楽の人々は、この鳴き声を聞き終わり、


誰もが仏を念じ、教えを念じ、仏教教団を念じる」


※五根(ごこん)

 覚りを実現するための五つのはたらき。

 ①信じる②努力する③記憶する

 ④精神統一する⑤智慧


※五力(ごりき)

 さとりを実現するための五つの力。

 五根(ごこん)が

 五障(欺く・怠ける・怒る・恨む・憎む)

 を打ち破るための具体的な力となったもの。

 ①信じる力②努める力③記憶する力

 ④精神統一する力⑤智慧の力


※七菩提分(しちぼだいぶん)

 覚りを実現するための七つの要素。

 ①記憶する②教えの真偽を選び分ける

 ③努力する④正しい法を喜ぶ

 ⑤心が軽やかになる⑥心を統一する

 ⑦対象への執着を捨てて心が平等になる


※八聖道分(はっしょうどうぶん)

 仏教の八つの実践法。

 ①正しい見解②正しい思惟③正しい言葉

 ④正しい行い⑤正しい生活⑥正しい努力

 ⑦正しい憶念⑧正しい瞑想





(解説)


『阿弥陀経』に登場する鳥は、


私たちの世界に存在する鳥と、


私たちが見たこともない鳥がいます。


私たちの世界に存在する鳥は、


白鳥・クジャク・オウム・九官鳥。


私たちが見たこともない鳥に


迦陵頻伽(かりょうびんが)と


共命(ぐみょう)の鳥がいます。


迦陵頻伽(かりょうびんが)は頭が人間、


そして体は鳥の姿です。


共命(ぐみょう)の鳥の方は、頭が二つある双頭一身です。


双頭は人面だけではなく、鳥の場合もあるのだそうです。


阿弥陀経では、これらの鳥は、


昼夜六時間毎に、きれいな声で鳴いて


仏の法を伝えていると説かれています。


その鳴き声を聞くと、仏を念じ、教えを念じ、


仏教教団を念じる気持ちが自然に湧いてくるのです。


迦陵頻伽(かりょうびんが)は雅楽の曲にも


登場します。


曲に合わせて羽をつけた四人の童子が


可愛く舞う姿は、極楽を思い起こさせてくれます。