(本文)
また次に舎利弗(しゃりほつ)、
かの国には常に種々奇妙(しゅじゅきみょう)なる
雑色(ざっしき)の鳥あり。
白鵠(びゃっこく)・孔雀(くじゃく)・
鸚鵡(おうむ)・舎利(しゃり)・
迦陵頻伽(かりょうびんが)・
共命(ぐみょう)の鳥なり。
この諸衆(もろもろ)の鳥、
昼夜六時(ちゅうやろくじ)に
和雅(わげ)の音を出(い)だす。
その音(こえ)、五根(ごこん)・
五力(ごりき)・七菩提分(しちぼだいぶん)・
八聖道分(はっしょうどうぶん)、
かくの如き等(ら)の法を
演暢(えんちょう)す。
その土(ど)の衆生、
この音(こえ)を聞きおわって、
皆悉く仏を念じ法を念じ僧を念ず。
(現代語訳)
〈釈尊から舎利弗(しゃりほつ)に向けてのお言葉のつづき〉
「また次に舎利弗(しゃりほつ)よ、
極楽には常に種々の美しく彩られた鳥がいる。
それは白鳥、クジャク、オウム、九官鳥、
迦陵頻伽(かりょうびんが)、
共命(ぐみょう)の鳥である。
これらの鳥は、昼夜六時間毎に、
優雅な鳴き声でさえずるのだ。
その鳴き声は、五根(ごこん)・五力(ごりき)・
七菩提分(しちぼだいぶん)・
八聖道分(はっしょうどうぶん)などの、
仏教の教えを説いている。
極楽の人々は、この鳴き声を聞き終わり、
誰もが仏を念じ、教えを念じ、仏教教団を念じる」
※五根(ごこん)
覚りを実現するための五つのはたらき。
①信じる②努力する③記憶する
④精神統一する⑤智慧
※五力(ごりき)
さとりを実現するための五つの力。
五根(ごこん)が
五障(欺く・怠ける・怒る・恨む・憎む)
を打ち破るための具体的な力となったもの。
①信じる力②努める力③記憶する力
④精神統一する力⑤智慧の力
※七菩提分(しちぼだいぶん)
覚りを実現するための七つの要素。
①記憶する②教えの真偽を選び分ける
③努力する④正しい法を喜ぶ
⑤心が軽やかになる⑥心を統一する
⑦対象への執着を捨てて心が平等になる
※八聖道分(はっしょうどうぶん)
仏教の八つの実践法。
①正しい見解②正しい思惟③正しい言葉
④正しい行い⑤正しい生活⑥正しい努力
⑦正しい憶念⑧正しい瞑想
(解説)
『阿弥陀経』に登場する鳥は、
私たちの世界に存在する鳥と、
私たちが見たこともない鳥がいます。
私たちの世界に存在する鳥は、
白鳥・クジャク・オウム・九官鳥。
私たちが見たこともない鳥に
迦陵頻伽(かりょうびんが)と
共命(ぐみょう)の鳥がいます。
迦陵頻伽(かりょうびんが)は頭が人間、
そして体は鳥の姿です。
共命(ぐみょう)の鳥の方は、頭が二つある双頭一身です。
双頭は人面だけではなく、鳥の場合もあるのだそうです。
阿弥陀経では、これらの鳥は、
昼夜六時間毎に、きれいな声で鳴いて
仏の法を伝えていると説かれています。
その鳴き声を聞くと、仏を念じ、教えを念じ、
仏教教団を念じる気持ちが自然に湧いてくるのです。
迦陵頻伽(かりょうびんが)は雅楽の曲にも
登場します。
曲に合わせて羽をつけた四人の童子が
可愛く舞う姿は、極楽を思い起こさせてくれます。