2025年10月14日火曜日

10月後半のことば 否定的な思考が苦しみを引き寄せる

 10月後半のことば

「苦しみというのは、牛が引く車のように、否定的な思考に続いてやってくる」ダンマパダ


 お釈迦さまがお伝えくださった仏教の教えは、「苦しみ」から逃れ出るためにあります。誰にも避けられない「老いや病、死」といった大きな苦しみだけでなく、私たちの多くは、もっと日常的な「思い通りにならないことへの心のざわつき」に悩んでいます。

 もちろん、地震や事故のような、避けられない外部の出来事からくる苦しみもあります。これらをすぐに「受け入れろ」と言われても難しいでしょう。しかし、私たちが日々感じているストレスやイライラの多くは、実は自分の心のあり方が作り出しているとしたらどうでしょうか。この小さな苦しみの正体に対処できるようになれば、やがて来るかもしれない大きな苦しみさえも乗り越える力が備わるかもしれません。

 仏教では、「苦しみ」は、「否定的な心」、つまり「思い通りにならないことを、強引に自分の都合の良いようにしようとする自己中心的な心」に必ずついてくると説かれます。これは、牛が引く車のように、「心(牛)」の後を「苦しみ(車)」が必ず追ってくる関係だとたとえられています。

 たとえば、家族やパートナーが自分の期待通りに動いてくれないとき。「なぜわかってくれないんだ」「こうすべきだ」と、相手をコントロールしようと腹を立てる。これが「自己中心的な心(牛)」です。その結果、イライラが募り、関係が悪化し、孤独感や怒り(苦しみ=車)に苛まれます。また、仕事で正当に評価されなかったと感じたとき。「自分だけが損だ」「もっと認められるべきだ」と、現状を受け入れず、自分の欲望を満たそうと焦り、不満を膨らませる。これも「自己中心的な心(牛)」です。その結果、自己嫌悪や嫉妬心に心が焼かれ、満たされない気持ち(苦しみ=車)に苦しむのです。

 仏教の教えは、この「心の牛」に気づくように促します。「今、自分の心はどんな状態か」「どんな感情が湧いているか」と、良い悪いと判断せず、ただ静かに観察する意識を持つこと。これこそが、苦しみの連鎖を断ち切るための最初の一歩です。心のあり方一つで、私たちの世界は大きく変わります。苦しみの車が動き出す前に、自分の心というハンドルを正しく握り直す意識を持つことが、穏やかな日常への道を開いてくれるでしょう。

10月後半のことば 否定的な思考が苦しみを引き寄せる

 10月後半のことば 「苦しみというのは、牛が引く車のように、否定的な思考に続いてやってくる」ダンマパダ  お釈迦さまがお伝えくださった仏教の教えは、「苦しみ」から逃れ出るためにあります。誰にも避けられない「老いや病、死」といった大きな苦しみだけでなく、私たちの多くは、もっと日常...