2020年8月24日月曜日

所求・所帰・去行⑫(十悪 瞋恚)

十悪の九つ目は「瞋恚(しんに)」です。

 

「気にくわないことがあると怒る」ことです。

 

自分の気にくわないことがあると、

 

それを排除しよう、排除しようとする心です。

 

それを自分より立場の弱い者に

 

怒りは向きやすいものです。

 

子どもや後輩、部下、買い物先の店員など。

 

以前こんなことがありました。

 

お昼にチェーンのセルフうどん店に

 

一人で食事に参りました。

 

私が列に並んでいると、私の後ろに並んだ

 

80代ぐらいの夫婦の男性が怒鳴りだしました。

 

何事かと思って見ると、

 

どうも店員の女性が「太い麺ですか?細い麺ですか?」

 

と尋ね、客の男性が「太い麺」と答えたのに

 

店員が聞き間違えて「細い麺ですね」と言ったことに

 

腹を立ててどなっているようです。

 

ただの聞き間違えにすぎず、店員は謝っているのに

 

怒りが収まらず怒鳴り散らしているのです。

 

次に揚げたテンプラが積まれているのを見て

 

客の男性は「おい!お○はん!これは揚げたてなんか?!」

 

と汚い言葉を投げつけます。

 

「揚げたものを積んでいますので、

 

揚げたての熱々ではありません」と

 

店員が冷静に答えます。

 

男性は「熱々と違うのか!何だそれは!」

 

とプリプリ怒っています。

 

私はよほど「いい加減にしなさい!みっともない!」

 

と言おうかと思いましたが、何とか押さえました。

 

この男性がなぜこれほど些細なことで

 

怒っているのはわかりません。

 

普段からこんな態度でしたら、

 

きっとあちこちでトラブルが絶えないでしょう。

 

奥さんは隣で顔を赤らめ、店員に謝っています。

 

でも実は、それを見ている私も怒りを

 

起こしてしまっています。

 

皆さんはいかがでしょうか?

 

自ら怒り、人の怒りを見ては怒り、

 

人に当たり、物に当たり、時間がないと

 

イライラする毎日ではありませんか?

 

一日の始まりに、怒り、一日の大半怒っている人が

 

幸せになれようはずもありません。


これら「貪(とん)・瞋(しん)」に「愚癡(ぐち)」を加えて


「三毒(さんどく)煩悩(ぼんのう)」といいます。


煩悩(ぼんのう)の代表です。


「愚癡(ぐち)」は


「真理に逆らって正しくものごとを見ることができない」ことです。


先に「無明(むみょう)」の項でもお伝えしたように


「無常(むじょう)」や「無我(むが)」「苦」


といった、避けようのない真理に逆らう私たちです。


「三毒(さんどく)」なんて、


すごいネーミングだと思いませんか?


「毒」なのですから、自らを傷つけます。


自分にとっては「自分が得をする」と思って


欲張っているのに、実はそれが自分を


傷つけているというのです。 


「自分を守ろう」として怒っているのに、


それが自分を傷つけているというのです。


恐ろしいことだと思いませんか?


「愚癡(ぐち)」「無明(むみょう)」「邪見(じゃけん)」


などの言葉はすべて「避けられないもの」


「避けられないこと」に逆らって「苦」を味わう


私たちの「愚かな心」をいいます。


このような愚かな心を持ち合わせている私たちは


「自分だけを生かそう」とします。


「自分だけを生かそう」として「自分だけ得をしよう」と


思い、自分に寄せてくるのが「貪欲(とんよく)」です。


「自分だけを生かそう」として気にくわないものを


排除しようとするのが「瞋恚(しんに)」です。


この「愚癡(ぐち)」の心を根源として


「貪欲(とんよく)」や「瞋恚(しんに)」の


心を起こします。


これらの「煩悩(ぼんのう)」を断つことができれば、


あらゆる苦しみから逃れ、覚りの智慧を得ることが


できるといいます。


自らを見つめると、覚りにはほど遠い自分に気づかざるを得ません。

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