その怖い「死」というものは一回きりではなく、
仏教のみ教えでは、
「何度も繰り返してその恐怖を味わうのだ」
と説かれています。
ラベル「浄土宗の教え 第2部 念仏と出会うということ」
我々は苦しみ迷いの世界をずっと
「生まれては死に」を繰り返しているといいます。
「自分が死ぬ」ことも怖いのに、それだけではなく、
「愛する人と死に別れる」という身を引き裂かれるような
悲しみにも出会わなければなりません。
必ず別れなくてはならないのが世界の定めです。
「長生きをするほど別れ多くなる」と川柳でも詠まれます。
一回死ぬだけでも恐ろしいことなのに、
何度もそれを体験するのです。
同じ「無常」でも私たちは「子供の成長」や、
「病気が回復する」という望ましい変化は
喜んで受け入れます。
しかし、自分の「老い」「病」「死」、愛する人の「死」、
こちらの「無常」は受け入れ難いことでしょう。
誰もが生きていたら老いていくし、病気になるし、
いつか必ず死を迎えます。
「いつ死ぬかもわからない」
というのは至極当然の事実なのに、
自分はまだ大丈夫だと思ってしまいます。
『方丈記』
鴨長明
現代語訳・安良岡康作