3月前半のことば
「一人では何も出来ぬ。然し、先ず一人が始めねばならぬ。」(岸田國士)
戯曲『チロルの秋』を生んだ劇作家であり、小説家でもある岸田國士氏のことばです。
世界平和や人類の幸福という大きな目標を前にすると、一人の力はあまりに小さく感じられます。しかし、どのような変化も、常に「私」という一人の行動から始まります。
例えば、地域の環境を良くしたいなら、まず一人が足元のゴミを拾う。職場の雰囲気を明るくしたいなら、まず一人が笑顔で挨拶をする。「自分一人では意味がない」と諦めるのではなく、まず自分が動く。物事はこの一点からしか動き出しません。
この道理は、浄土宗の教えにも通じます。
阿弥陀仏は、すべての者を救うために極楽浄土を建立されました。私たちが人々を救うためには、段階があります。それは、まず自分自身が「南無阿弥陀仏」と称え、浄土へ往生することです。
浄土へ往(い)き、菩薩となって、他者を救う力を育てていきます。自分の往生を願うことは、決して利己的な行為ではありません。多くの人を幸せにするという理想を実現するための、最も確実な第一歩なのです。
まず一人の「私」がお念仏を始める。ここからすべてが始まります。