数あるお釈迦さまのみ教えの中で、
浄土宗が拠り所とする三つのお経、
浄土三部経についてお伝えして参ります。
「仏教入門」でお伝えしましたように、
お釈迦様は「この世は苦である」とおっしゃり、
四苦八苦に代表される苦しみを説いてくださいます。
そしてその苦しみの原因は煩悩である、
と説かれました。
その煩悩を無くす方法を説かれたのが
「お経」であると言えます。
しかし一口に「煩悩をなくす」と言いますが、
人の能力には随分差があります。
お釈迦さまはそれぞれの人柄や能力に合わせて
教えを説かれました。
これを「対機説法」(たいきせっぽう)と申します。
「機」とは「素質」とか「能力」という意味。
ある先輩から「人」と訳すとわかりやすいよ、
と教えていただきました。
つまりその人、その人に合わせて
法を説かれたということです。
それはあたかもお医者さまが患者の病状に合わせて
薬を処方するが如くです。
ですから「応病与薬」(おうびょうよやく)
ともいいます。
「あなたはこういう性格でこういう能力がある。
だからこういう修行をしなさい」
と一人一人に合わせて教えを説いてくださいました。
一人一人の心の中の汚れ、心の動きも全部お見通し。
だから「この人にはこう言えば良い方向にいくだろう」
「この人にはこの修行が合うだろう」と、
思いを寄せて説いて下さったわけです。
『浄土三部経和解』
川合梁定